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対面営業からデータ/デジタル営業へ:B2B営業変革のためのリーダー向けガイド

Junko Kemi, founder of kay me
1.創業当初、伝統を重んじる日本の職人に新しい伸縮素材を扱っていただくことは大きな挑戦だったと思います。変化に対して慎重な相手と信頼関係を築き、共に未知の道を歩むために、どのような戦略を用いたのかをお聞かせください。

2011年にkay meを創業した際、私は「機能性と『きちんと感』を両立させた服」を作りたいと強く思っていました。創業前は経営戦略のコンサルタントをしていたのでその習慣でフィールド調査をしたのですが、やはり購入しやすい価格帯でかつ上記のコンセプトだけを扱うブランドは存在していませんでした。また大阪の呉服屋の祖父母を見ていたので、事業を通じ、日本が誇る繊維業や職人技を守りたいという思いもありました。

当初も今も伸縮性のある表地・裏地を同じく伸縮性のある糸を使って、細かなギャザーやドレープを寄せながら縫製できる職人を見つけるのが難しく、職人の方々にとっても未知の挑戦でした。

私は服飾製造には門外漢でしたが、できるだけマーケットのニーズを形にすることを重視し、やったことがないことも、どのようにすればできるようになるかを素材の企業や縫製・染色の職人さんと話し合い、「不可能を可能に」する道を見出してきました。また、職人さんの工程を学び、プロフェッショナル性に心から敬意を持ち、品質への真摯な姿勢を共有することも大事であると学びました。

現在、日本国内で流通するアパレル製品のうち、日本製比率は戦前の100%に近い値からkay me 創業当時には3%にまで低下、さらにコロナ禍での工場廃業が相次ぎ、現在は約1%にまで減少しています。

2.米国系経営戦略コンサルティング業界のスピード感と、ファッション業界における製品サイクルの長さ、この文化的ギャップをどう乗り越え、スピードと品質を両立させたのでしょうか。

kay meの強みは、もともと合理性を追究する米国系経営コンサルティング会社で培った分析的思考にあります。現在もすべての意思決定において、「ゴールから逆算する」という発想とデータに基づく判断を重視しています。これにより、品質を損なうことなくスピーディに動くことが可能になっています。

創業初期は、デザインから素材調達、広報、販売、カスタマーサービスまで、実妹と2人で全てを担っていました。コンサルティング事業の収益を衣料開発に再投資する形で事業を進めていたため、スピードと精度のバランスが重要でした。

kay meのリーダーシップとは、分析的な厳密さと職人への敬意の融合です。いつアクセルを踏み、いつ集中すべきかを見極め、スピードと卓越性の両立を文化として根付かせています。

この姿勢により、私たちはグローバル展開を迅速に進めることができました。創業当初から英国に法人を設立しメイフェアで2か月に及ぶPOPUPなどを展開。そのころからグローバル直販が可能なWEBサイトを開設しています。現在は、グローバルサイト、シンガポールサイト、日本サイトと3つのオンラインストアを展開。実店舗は日本国内、東京・銀座本店、日本橋店、有楽町店、京都店、梅田店と5店舗、そしてコロナ禍が明けてからは2024年11月にシンガポールの高島屋、2025年6月には香港のSOGO銅鑼湾店に出店を果たしました。

3.真の変革には、従業員の「納得感を伴う協力」が不可欠だと思います。数値的な成果以外に、どのような指標で社員の本質的なコミットメント度合いを図っているのでしょうか。

kay meでは、どのような状況でもポジティブで建設的な思考を持つことを重視しています。課題に直面した際は「できない理由」ではなく「どうすればできるか」を考える姿勢が求められます。

真のコミットメントは、具体的な行動として表れます。

お客様との対話、フィードバックの回収、そしてその気づきを業務に反映させる姿勢に現れます。

社員が共感・好奇心・主体性を持って課題に取り組むことこそ、変革を内側から推進する力になります。これがkay meの文化そのものです。

真のコミットメントは、具体的な行動として表れます。お客様との対話、フィードバックの回収、そしてその気づきを業務に反映させる姿勢に現れます。

4.「女性が職場で輝ける服を」という理念は、社内文化にどのような影響を与えているのでしょうか。

kay meでは、女性のみならず国籍や年齢、出身業界など関係なく意欲ある社員が自らのアイデアを実現できる文化を大切にしています。「意見を言う人」「従前どおりを疑い、新しい道を切り拓く言動」が尊いとされます。また働く時間に制約がある人でも能力を発揮できるように働き方の柔軟性やAIやデータサイエンスを強みとするグローバルチームのもと、業務の効率化を日々追究しています。

女性のみならずどのような境遇の人でも意欲があり新しい価値を出せる人は活躍できる環境です。また、様々な国の有能なタレントを増やしていくため、本社の会議も英語で行い、日本語ができなくても問題のない環境をつくっています。

5. 「働く女性の負担を減らす」というkay meのコアバリューを、社内の変革活動にどのように反映しているのでしょうか。

新しい取り組みを進める際も、全員が会社のビジョンを共有しているため、自発的な貢献が生まれます。社員は自らアイデアを出し、プロジェクトを推進し、フィードバックをもとに改善を重ねます。

最近では、仕事中の血行促進や疲労軽減を目的とした新シリーズ「Yui」を開発しました。これは、社員の問題解決志向と共感力から生まれた製品です。

社員は自らアイデアを出し、プロジェクトを推進し、フィードバックをもとに改善を重ねます。

6. 変化への抵抗は、恐れや不安から生まれます。アジアでは「調和」や「誇り」が重視される文化がありますが、社員の潜在的な不安をどのように把握し、対話を促しているのでしょうか。

kay meでは、本社のみならず販売店舗の社員や派遣スタッフからも毎夜日報が上がってきており、私も携帯端末でほぼすべてに目を通し際立った問題が起きていないかを確認しています。また本社では月曜の朝に生産企画、マーケティング、テクノロジー、店舗運営、カスタマーエクスペリエンスの主要メンバーが一同に集まり、前週の日報すべてに日本語、英語2言語で目を通し、またAIにかけて対処すべきことを発見し迅速に指示を出すセッションがあります。社員の不安があるとしたら、それはお客様に対して誇りが持てないときや、お客様の不安を感じたときであることが多いため、社員を通じてお客様への価値を最大化するための仕組みとしても設けています。これは私の最初のキャリアがベネッセという教育出版社での営業部隊だったのですが、ベネッセという大企業であっても営業担当者の日報を本社の各部門がすべて分析し迅速に対応する文化であったことを真似ています。多国籍チームではありますが、チャットアプリを通じて比較的経営と現場が近く直接社長である私にいろいろな思いを伝えてくれる社員も多くその点も気に入っています。

7.コンサルタントから”人”中心の経営者へ。ご自身のリーダーとしての行動や思考で、意識的に変えた点はありますか。

BCGで培った分析的思考は、今も私のリーダーシップの核ですが、マーケターとしても同時に周囲の声に耳を傾け改善につなげることの重要性も痛感しています。kay meの主な顧客は、弁護士、医師、会計士、経営者、IT・金融・製薬業界などの専門職の方が多く、販売店舗やお客様イベント、日々の会食などを通してキャリアやライフでの課題やどのようにkay me が役立っているか、どう改良をすべきかお聞きすることが多いです。また先述の販売店舗からの日報や定量データを通じても真のニーズやアンメットニーズを理解することを日々心掛けています。

また、創業するまで米国系の経営戦略のコンサルティング業界にいたこともあり、小売りや服飾デザインなどの業界の人たちがもつ発想の仕方や価値観などは新鮮な驚きとともに戸惑いを持つこともありました。

当初は歩み寄りを重視していましたが、組織が大きくなるにつれ多種多様な価値観の人たちと出会う中で、逆に我々が持つ哲学やポリシー、戦略性の部分に共感をしてくれる人たちでないと共に前に速く進むことはできないと気づきはじめました。そこからは、採用の方針なども明確に言語化することができ、現在はどの部門であっても、弊社の特異性に誇りを持ち、そのことが好きで入社してくれた仲間たちと共創していけていると感じます。

8. リーダーは、確信性と謙虚さの両立が求められます。不確実な未来に対して、どのように自信と謙虚さのバランスを取っていますか。

もともと服飾デザインの世界にいなかったことや、マーケティングのコンサルティングを生業にしていたこともあり、良い意味で不確実なときは、マーケットやお客様に直接確認するようにしています。例えば、製品企画の前には顧客調査を実施し、需要を予測します。これにより、無駄のない生産を実現し、環境配慮にもつながっています。

すべての意思決定を、アンケート結果、販売データ、顧客の声といった「数値化された根拠」に基づいて行うことで、共感と結果を両立させています。

9.「Try&Buy」などの顧客主導型のサービスは、どういった現場の声から生まれたのでしょうか。

kay meでは、変革は現場から生まれると考えています。

「Try&Buy」をはじめ、フルワードローブ・エコシステムのアイデアも、すべてお客様や店舗スタッフの声から生まれました。日報や店頭・オンラインでの会話、サービス対応のやり取りなど、現場の声は生きた資産として吸い上げ、どんな小さな気づきも見逃さない仕組みがあります。

製品の生産前から購入体験全体にわたって行うアンケートも欠かせません。これにより、お客様の本当のニーズを正確に把握します。カスタマーサポートチームは、AIツールを使って課題や傾向を素早く分析しますが、お客様への返信はすべて人の手で作成。パーソナライズ、共感、タイムリーな対応こそ、kay meの根幹となる価値です。

アイデアや改善のチャンスを見つけたら、すぐに小さく試す。プロトタイプを作りテストしたうえで、顧客にとって本当に価値があると確認できたものだけを全社的に展開します。こうしてkay meの革新は、常に顧客に最も近い現場の体験から生まれるのです。

10.お祖母様の「人生の意味は何を得るかではなく、他者のために何ができるかにある」という教えが、経営の羅針盤となっているそうですね。

祖母の言葉の「人生は自分が何を手に入れるかではなく、他人のために何ができるかだ」は、私にとって単なるスローガンではありませんでした。それは、祖母の毎日の暮らしのリズムそのものでした。小さな着物店で祖母を見て育った私は、祖母のおもてなしが、お客様の心をどれほど温めるかを実感しました。お客様が店を後にするときの、静かに満ち足りた笑顔、その喜びこそ、私がkay meを通して世界に届けたいものです。その記憶は、創業当初からの私の羅針盤となっています。

この信念が、kay meの意思決定の基盤となっています。国際市場への進出、新しい商品ラインの開発、成長の速度と質の選択といった複雑な局面に直面するときも、私たちはいつも自問します。「この意思決定は、誰かがより自信を持ち、快適さと尊厳を感じながら前に進む助けになっているか?」

私たちの目標は、人々の生活をより軽く、より快適に、そして希望に満ちたものにすること。そのため、kay meのイノベーションは常に人が主導します。女性たちの時間を何千時間も節約できる衣服、日本の職人の技を守り次世代に伝える取り組み、日常の大変さを減らすサービス設計、そのすべてが「人のため」にあります。戦略的な意思決定の基準も同じです。私たちは人々の生活に価値を加えているか、それとも単に騒音を増やしているだけか。

事業を世界へ拡大する際も、単なる規模拡大は追いません。私たちは、使命が本当に人の為になる場所だけで成長します。

日々の挑戦に向き合う働く女性を支え、地域の職人のコミュニティを守り、責任と思いやりが共存する職場文化を育むーkay meのエコシステムのすべてが、この哲学を反映しています。

つまり、kay meの変革は「大きくなること」ではありません。より深くなることー人間性に沿い、ケアにコミットし、祖母の信念に忠実であること。それこそが私たちの本質です。

世界がどのように変化しても、私たちの使命は変わりません。快適さを生み出し、自信を支え、職人の技を敬い、イノベーションを人のために活用すること。 人に代わるためではなく、人を支えるために。この考えこそ、今日だけでなく、次の300年にわたってブランドを築く基盤です。

執筆者:毛見 純子氏
Junko Kemi, founder of kay me

毛見 純子氏

2011年3月東京・銀座にてkay meを設立。前身として2008年にマーケティングコンサルティング会社を設立し代表に就任。起業前は2004年から2007年までBCG(ボストン コンサルティング グループ)にて経営コンサルタントとして勤務し、金融、IT、エネルギー業界を中心にコンサルティングサービスを提供。それ以前にはPwC(プライスウォーターハウスクーパース)にて組織人事コンサルティングに従事。キャリアのスタートは教育出版社ベネッセでのマーケティングおよび営業職。

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