伝統的に、アジア諸国では、女性が主な育児を行うことが常になっていました。しかし、シンガポール政府は、男性もより育児に関わり、子供との時間を増やせるよう新たな「シェア育休」制度を展開すると発表しました(2025年4月1日より段階的に施行)。
新たなシェア育休制度とは?
もともと旧制度では、母親の産休の16週間のうち、最大4週間分を父親に譲渡することができました。しかし、2025年4月1日からは16週間の政府支給の産休(GMPL: Government Paid Maternity Leave)とは別に6週間のシェア育休(SPL: Shared Parental Leave)が父母に付与されることになります。また2026年4月1日からはこのシェア育休が10週間に引き上げられる予定です。
旧制度 (2025 年 3 月 31 日まで) | 新制度 (2025 年 4 月 1 日より施行) | 新制度 (2026 年 4 月 1 日より施行) | |
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シェア育休 | 母親の政府支給の産休(16週間)を最大4週間まで父親にシェア可能 |
6週間のシェア育休を政府支給の産休とは別途付与 デフォルトで母親・父親それぞれに3週間ずつ付与 |
10週間のシェア育休を政府支給の産休とは別途付与 デフォルトで母親・父親それぞれに5週間ずつ付与 |
「上記の表の情報は、Channel News Asia (CNA) を参照しております。」
取得条件
シェア育休の取得条件は次の通りです:
- 新生児がシンガポール国民であること
- 子供の母親が既存の制度に基づく「政府支給の産休」の対象であること
- 両親が法律上の婚姻関係にあること
申請方法
雇用主側
- 従業員が休暇に入る前にシェア育休の受給資格を確認
- MSFの申告フォームテンプレート(母親用、父親用)が利用可能です。もしくは会社独自のフォームを使用いただいても問題ありません。
- 従業員は、休暇に入る4週間前までに通知する必要があります(雇用者側が同意する場合は通知期間を短縮可能)。
- 子供が生まれてから 4 週間後に、GPL (Government-Paid Leave) ポータルを通じて、従業員のシェア育休の分配を確認
- 従業員は、子供の誕生日/養子縁組の正式な意思表示日(FIA: Formal Intent to Adopt)後4 週間は、自由に配分の取り決めを変更することができます。
- 従業員が4週間経過後に配分の変更を希望する場合、以下の手続きが必要となります:
- 雇用主と変更について話し合い、同意を行う。
- 変更に同意したことを示す書類を従業員に提出する。別の形式の書類(例 雇用主との電子メールでのやりとり、雇用主の承認書、HRポータルからの書類など)も認められます。
- 従業員がLifeSGに提出した後、配分の取り決めについて再度確認を行ってください。
- 従業員がシェア育休を取得した後、GPLポータルからオンラインで払い戻し請求書を提出
- 払い戻し請求は従業員がシェア育休を取得中でも申請可能です。
- 払い戻し請求は従業員のシェア育休最終日から3ヶ月以内に提出すること。
従業員側
- 配偶者と相談の上、休暇配分を決定する
- 雇用主への通知
- 可能な限り早期に雇用主に通知し、取得要件の確認を行ってください。
- LifeSGで休暇計画を提出
- 子供の出生後または正式な養子縁組の意思表示日(FIA: Formal Intent to Adopt)後にLifeSGを通じて配分計画を提出します。
- 2025年4月1日以降、 Birth Registration Service または Manage SPL Sharing Arrangement Serviceを通じてご申請いただけます。
- 出産予定日が2025年4月1日以降であるが、実際の出生が2025年4月1日より前となった場合はこちらのメールアドレスにお問い合わせいただけます:contactus@profamilyleave.gov.sg
- 子供の出生後または正式な養子縁組の意思表示日(FIA: Formal Intent to Adopt)後にLifeSGを通じて配分計画を提出します。
- 各会社の休暇申請手順に従い休暇申請を行う
- 最短通知期間(休暇取得の4週間前)までに休暇申請を行ってください(雇用主の同意がある場合は短縮可能)。
- シェア育休は連続して取得するか、雇用主の同意があれば断続的に取得することもできます。雇用主からの合意が得られない場合、シェア育休は子供の出生日を含む26週間以内で1回の連続した期間として取得する必要があります。
- シェア育休は退職時の通知期間に充てることはできません。
個人事業主や短期契約者も対象になるのか?
個人事業主や短期契約者でも、上記の基準を満たしていればシェア育休制度の対象となります。
夫婦間で週の勤務日数か違う場合
夫婦間で勤務日数が違う場合はそれぞれの勤務日数に応じた休暇が付与されます。
例 父親は週6日、母親は週5日勤務の場合、シェア育休もそれぞれ6日と5日を基準に付与されます。
シェア育休の取得時期
シェア育休は新生児の出生後12ヶ月以内に申請する必要があり、出世以前の申請はできません。
片方の親のみがシェア育休を利用できるか?
はい、できます。基本的には、シェア育休は両親で均等に配分されることになります(2025年4月1日から2026年3月31日までに生まれた子供の場合、父母それぞれに3週間ずつ、2026年4月1日以降に生まれた子供の場合、父母それぞれに5週間ずつの育休が割り当てられる)。
しかし、NPTDは、両親間で育児体制のニーズに応じて育休を再配分する柔軟性を持たせるとしています。
LifeSGアプリを通じてシェア育休の配分を確認し、子供の出生後最初の4週間以内であれば配分の変更を申請できます。その4週間を過ぎた場合は、雇用主が同意した場合にのみ変更が可能となります。
雇用主は、2025年4月1日以降、MSFのポータルを通じて従業員の育休配分を確認できます。
NPTD: National Population and Talent Division:シンガポール政府の機関の一つで、人口政策や人材戦略を担当する部門
シェア育休の給与は誰が負担するのか?
シェア育休は「政府支給」の一環として実施されているため、休暇中の給与は政府によって負担されます。
シェア育休を取得する場合、1日の補償限度額は$2,500 / 1週間の勤務日数となり、雇用主は、「Government-Paid Leave Calculator」を使用して、補償額の見積もりが可能です。
なお、雇用主は従業員の給与を通常通り支払う必要がありますが、週あたり$2,500(CPFを含む)を超えて支払う義務はありません。もちろん、雇用主が任意でこれを超えて支払うことも可能です。
上記でご紹介させていただいた通り、シンガポールでは、共働き夫婦にとって子育てと仕事の両立がよりしやすい環境が整えられつつあります。新たに導入されたシェア育休制度はその取り組みの一環です。この制度により、育児の負担を夫婦で分担しやすくなり、家庭と仕事の両立がより現実的なものとなります。
制度を正しく理解し、積極的に活用できる場を作ることで社員の生産性や定着率の向上に繋がり、結果的に雇用主にとってもメリットが生まれるのではないかと考えられます。
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