シンガポールの企業向け
シンガポールは、外国貿易と投資に大きく依存する小さな国家であり、2006年に設立された「三者間パートナーシップ」モデルを採用しています。このモデルは、労働省、全国労働組合会議、シンガポール全国雇用者連盟の三者が協力し、労働組合、雇用者、政府の関係を改善することを目的としています。本記事では、雇用者向けのフレキシブルな働き方についてご紹介します。
FWA(Flexible Working Arrangement)とは?
フレキシブルワークアレンジメント(以下FWA: Flexible Work Arrangement)は、2024年12月1日から施行されます。この制度は、従業員の仕事と生活のニーズを支えつつ、ビジネスの運営と生産性を維持することを目的としています。FWAには以下の3つのカテゴリーがあります:
- フレキシ・タイム:勤務時間の調整や柔軟なシフト、圧縮勤務などが含まれます。
従業員は、総勤務時間や業務量を変えることなく、異なる時間帯に働くことができます。 - フレキシ・プレイス:テレワークや在宅勤務などが含まれます。
従業員は、オフィス外での勤務やテクノロジーを活用したリモートワークを選択できます。さらに、オフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッド勤務も可能です。 - フレキシ・ロード:パートタイム、ジョブシェアリングなどが含まれます。
従業員は、自分の希望する業務量レベルを選び、それに応じた給与を受け取ることができます。
FWAの必要性
シンガポールは高齢化が進んでおり、低出生率が若年層の労働力参入の減少に寄与しています。55歳以上の労働者の割合は、2012年の19%から2022年の27%に増加しており、この傾向は続くと予想されます。高齢化に伴い介護の必要性が高まり、約26万人の生産年齢人口がこの影響で労働市場に参加していないとされています。
また、最近のCOVID-19パンデミックは、ワークライフバランスの重要性を改めて認識させ、多くの人々が働き方を見直す契機となりました。企業は、自社に最適なフレキシブルな働き方を決定する前に、業務の性質をよく理解することが重要です。労働市場のトレンドや競争市場での優位性を調査することもお勧めします。
FWAの正式な申請資格について
ガイドラインによると、従業員が指定された要件を満たさない場合、その申請は雇用者によって検討される必要がなく、三者間のガイドラインの適用外となります。また、FWAは通知期間中の従業員や試用期間中の従業員には適用されません。ただし、各ケースは個別に判断され、最終的には雇用者の裁量に委ねられます。
企業がFWAに関して留意し、準備すべきこと
正式なFWA申請の手続きを整える
企業は、従業員がFWAを正式に申請するための標準化された手続きを確立する必要があります。これにより、効果的で柔軟な働き方を実現するためのプロセスを整えましょう。デジタルプラットフォームや紙の申請書類を用意することも検討してください。
申請は書面で行い、以下を含める必要があります:
– 申請日
– 希望するFWAの種類、頻度、期間
– 申請の理由
FWAを交渉する際、給与の調整はありますか?
労働省大臣のガン・ショウ・ファン氏によれば、フレキシブルな働き方を導入しても、従業員の業務成果や生産性に影響がなければ、給与が減額されることはありません。
FWA申請とその対応方法
公正な評価を行う:
雇用者は、全ての申請を公平に評価し、2ヶ月以内に書面で決定を通知する必要があります。
却下の理由を文書で説明する:
雇用者は、以下のような理由でFWAの申請を却下する権利があります:
- 生産性や業績に重大な影響を与える場合:
- 高品質な業務(内部および外部)を提供するのに支障をきたす、または顧客満足度に悪影響を与える可能性がある。
- 予見される経費の増加を招く場合:
- 会社の経費に悪影響を及ぼす場合。
- 業務上の課題が生じる場合:
- 業務の性質上、実行が難しい、または追加の人員が必要になる、他の従業員の働き方に調整が必要になる場合。
不当な却下理由:
– 組織や管理層がFWAの導入に否定的である。
– 組織の伝統や慣習としてFWAを実施しない。
– リーダーやマネージャーが、物理的な出勤を重視し、従業員の成果を評価しない場合。
FWAが企業にもたらすメリット
- 企業ブランドの向上:
調査によれば、79%の回答者がフレキシブルな働き方があれば、企業へのコミットメントが高まると感じています。FWAを導入することで、先進的で従業員に優しい企業としてのイメージが確立され、優秀な人材を引き寄せ、定着させることができます。
- 採用の幅を広げる:
通勤範囲に制約されず、広い地域から優秀な人材を採用することが可能になります。フレキシブルな働き方を提供する企業には、地元や若年層からの関心が高まっています。
- 従業員の満足度と定着率の向上:
調査では、41%の回答者がフレキシブルな勤務時間がなければ仕事を選ばないとし、27%が勤務時間や場所の柔軟性不足で退職したと回答しています。フレキシブルな働き方は、従業員の士気や満足度、企業への忠誠心を高めることができます。
- ビジネスの継続性の強化:
フレキシブルな働き方の導入は、予期しないトラブルから企業を守る保険となります。ハーバード・ビジネス・レビューの調査によると、リモートワークの導入企業は、危機的状況においても安定した業績を維持し、準備が不十分な企業に比べて四半期ごとの収益が7000万ドルを超えたとされています。
効果的なFWA制度の構築方法
またシンガポールでの転職やキャリアアップをお探しの方におかれましてはこちらに履歴書をご提出くださいませ:
a. 透明性の確保:
FWA制度は、実施可能なFWAの種類、適用基準、制限事項、そして申請プロセスの概要を分かりやすく示す必要があります。FWA制度は、従業員がいつでも簡単にアクセスできるようにしておくべきです。申請の各ステップでオープンなコミュニケーションを奨励し、疑問や懸念を解消することで、理解を深めましょう。新入社員には、研修時にFWA制度についての説明セッションを設けるのが良いでしょう。
b.効果的なFWAの導入:
FWAの導入を成功させるためには、リーダーと従業員に対して適切なサポートを提供することが大切です。特に、技術インフラへの投資が重要です。デスクトップの代わりにノートパソコンを使用し、データ漏洩や喪失を防ぐためにクラウドベースのソフトウェアを導入します。また、monday.com、Trello、Notionなどのコラボレーションツールや、Zoom、Microsoft Teamsなどのコミュニケーションツールを活用し、すべての従業員が効率的かつ生産的に働ける環境を整えましょう。
i. パフォーマンス評価
SMARTの法則を活用し、すべての従業員に対して明確な目標と期待を設定します。
– Specific(具体的に)
– Measurable(測定可能な)
– Achievable(達成可能な)
– Relevant(関連性がある)
– Time-bound(期限がある)
この評価方法を取り入れることで、従業員は設定された目標に対して責任を持ち、積極的に取り組むようになります。従業員がプロセスに関わることで、目標達成に対する意欲が一層高まります。
個別やチームミーティングでのフィードバックを通じて、進捗状況や改善点を共有し、創造的な障害を克服するための貴重な機会となります。
ii.従業員の指導とトレーニング:
FWA制度や手続き、実施に関する成功事例を学ぶためのインタラクティブなワークショップを検討してみましょう。この際に、潜在的な懸念点にも対応することができます。
このトレーニングを通じて、従業員は自分の役割や責任をしっかりと理解でき、マネージャーはリモート環境でのチーム管理やコミュニケーションに関する貴重な知見を得ることができます。
FWA制度は定期的に見直し、組織の目標や価値観に沿って関連性と公平性を保つように心がけましょう。
また、FWAの導入をスムーズに進めるための無料ダウンロード可能なテンプレートもご用意しておりますので、ぜひご期待ください。
執筆者: Destiny Goh
書き直しおよび翻訳:Kota Baba
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