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変革の牽引者: グローバルロジスティクスから持続可能な未来へ

インタビュー担当: Destiny Goh
被面接者: 今北 千佳 氏 プロフィール

本インタビューでは、Greenpac社の最高経営責任者(CEO)である今北千佳 氏より、創業者からバトンを受け継ぎ同社を次のステージへ導くためのリーダーシップ戦略についてお話いただきました。彼女の哲学は、「継承と進化の両立」です。創業時からのサステナビリティへの信念を守りつつ、トップダウン型から自律型の組織文化への変革を目指しています。今北氏は、一貫した行動と共感を通じて信頼を築くことの重要性を示し、単一のリーダーシップ像にとらわれず、全社員が主体的にイノベーションを生み出せる組織を育むことで、すべてのステークホルダーに価値を提供できる強い企業づくりを目指しています。

ご自身のキャリアの歩みと、現在Greenpacの最高経営責任者として掲げている使命についてお聞かせください。

私のキャリアは1999年、アトランタに本社を置く米国の運送会社UPSでのAIESECインターンシップから始まりました。この経験がきっかけとなり、その後20年以上UPSで勤務することとなりました。

アメリカで7年、日本で4年、そしてシンガポールに戻ってからはディレクターとして、最終的にはシンガポールおよびマレーシアのマネージングディレクターを務めました。

2023年にUPSを退職後新たな機会を模索していた中で、最終的にGreenpacに惹かれた理由は二つあります。

第一に、地域社会に大きく貢献をしているシンガポールのローカル企業に、自身の専門知識を活かして貢献したいと考えたこと。

第二に、Greenpacのミッションが、私のこれまでの物流・オペレーション、そしてESG(環境・社会・ガバナンス)の経験と合致していたことです。同社は、ファミリーの価値観に基づいて持続可能な事業に投資するファミリーオフィスTreïsにより所有されています。

包装や梱包は、サプライチェーンにおいて見過ごされがちな分野ですが、その実大きな影響を与えます。私は物流分野で培ってきた経験を活かし、クライアントに対してより持続可能で革新的なサプライチェーン全体の改善提案を行っています。今の役割は、私のこれまでのキャリアと社会貢献への想いが交わる理想的な形です。

創業者による強い起業家型リーダーシップからの移行は、Greenpacにとって大きな変化だったと思います。戦略やKPIの枠を超えて、変革期におけるリーダーシップをどのように定義されていますか。

私たちが掲げるサステナビリティと革新的デザインへの取り組みは一貫していますが、創業者主導の文化からの移行には、意識と文化の変革が必要でした。強力な創業者を中心に築かれた組織では、どうしてもトップダウン型になりやすいです。

私のリーダーシップ哲学は、1人1人が自らの役割に責任を持ち、連携して機能する“精密時計のような組織”を築くことです。この仕組みにより、シンガポールとマレーシアで250名を超える社員を擁するGreenpacは、よりアジャイルでスケーラブルな体制を実現しています。

その実現のため、まずメンバーへの「権限委譲」と「自律性の強化」に注力しました。経営委員会の50%を新メンバーとし、新しい視点を取り入れ、全社的に「自ら考え行動する文化」を根付かせています。

最終的な目標は、指示で動くのではなく主体的に行動できる文化を築くことです。

オペレーション中心の企業からサステナビリティ中心の企業へと移行する際、「目的主導型」への変革ではリーダーシップの在り方はどのように変化しましたか。

Greenpacでは、サステナビリティは創業当初から組織のDNAの一部でした。創業者は「ゼロ・ウェイスト(廃棄ゼロ)」の理念を掲げ、この理念を体現する現事業所を、2012年に当時の副首相ターマン・シャンムガラトナム氏を迎えてオープンしました。屋根全面に設置されたソーラーパネルは、オフィスの電力を100%、操業の50%を賄うほどの発電量を持ちます。

したがって、私の役割は新しい理念を導入することではなく、既に確立された強力な基盤を尊重し、さらに発展させることです。「やるべきことをきちんと実行する」という行動を守りつつ、時代に合わせて生き残り、成長するための戦略を適応させることが私の使命です。

大きな変革期には、従業員の不安や抵抗も生じるかと思います。そのような状況で、どのように透明性のあるコミュニケーションを図り、不安を機会へと転換されましたか。

2024年2月にCEOとして着任した当初、組織には当然ながら不安と緊張がありました。私の最初のステップは、新たなビジョンを提示することでしたが、それはあえて「革新的なもの」にはしませんでした。あくまで「継承と進化」のビジョンです。

全く新しい方向性を打ち出せば、社内の人々を置いてけぼりにしてしまう恐れがあります。リーダーには、「真実」と「誠実さ」のバランスが求められます。

次に重要なのは「信頼を得ること」です。権限を与えられた立場として、私は常に最善を尽くす責任を持っています。そのために、現場に足を運び、耳を傾け、感謝を示し、必要な場面では毅然とした態度で臨みます。

私のリーダーシップは単一のスタイルではなく、全てのステークホルダー―取締役会、顧客、仕入れ先、社員―を最適にするための「奉仕の姿勢」です。真のリーダーシップは、中長期の計画よりも、日々の行動でこそ示されるものだと考えています。

全ての意思決定の基盤に、組織全体の幸福を置くことがとても重要です。

社員が安心して意見を言えるための「心理的に安全な場」をどのように作っていますか。

CEOという立場上、カジュアルな昼食会などで率直な意見を得るのは難しい場合もあります。そのため私は、形式的な場よりも、日常の行動やマネジメント層の姿勢の中で心理的安全性を築くことを重視しています。

マネージャー陣が恐れではなく信頼に基づいて運営できるよう、日々の対話の中で「傾聴」を文化として根付かせています。私自身がその手本となり、意見を受け入れる姿勢を示すこと、またマネージャーたちが自らの部下と真摯に向き合うよう促すことが重要です。

「オープンなコミュニケーション」を単発的な場ではなく、「文化」として定着させることを目指しています。

CEOとして就任後、社員の「納得感」を得るためにどのような取り組みをされましたか。

真の納得感は時間をかけて育まれるものです。私たちは、変革期のマネジメントチーム向けに「ADKARモデル」(Awareness・Desire・Knowledge・Ability・Reinforcement)を用いた研修を行いました。人は「否認」や「怒り」の段階を経て「受容」に至る――変化の心理的プロセスを理解するためです。

しかし、最も重要なのは「一貫性」です。ビジョンやミッション、そして「イノベーション」「パートナーシップ」「卓越」「サステナビリティ」「アジリティ」という5つのコアバリューを、日々繰り返し伝え続けています。

言葉と行動の一貫性を保つことで信頼を築く。それが本当の納得と受容を生む鍵です。

不確実性や失敗を認めつつもチームを導くという信念を、どう維持されていますか。

私は、失敗や挫折を「学びの機会」と捉えています。最近、マレーシアで大きなオペレーション上のトラブルが発生しました。最初に確認したのは「全員無事か」という点です。物的損害は取り戻せますが、人の安全は何より大切です。

この出来事は、私たちが一丸となって改善に取り組むきっかけとなりました。

正しいマインドセットを持てば、失敗は組織を強くする機会になります。

変革期に信頼を損なうリーダーの行動とは何でしょうか。また、もし信頼を損ねた場合それをどう修復しますか。

最も信頼を損なうのは「共感の欠如」です。真のリーダーシップとは、社員が安心して自分らしく働ける環境を築くことです。心理的安全性のない環境では、意見も創造性も生まれません。

米国の著者マシュー・フレイの著書『This is How Your Marriage Ends』に印象的な話があります。彼の離婚は「シンクにコップを置きっぱなしにした」ことから始まったと書かれています。しかし本質はその行為ではなく、繰り返される小さな無関心が積み重なり、相手の尊重を欠いたことにありました。

リーダーも同じです。変革期において社員の不安や感情を軽視すると、信頼関係は簡単に崩れます。

正しいかどうかよりも、相手を理解し共感する姿勢こそが、信頼構築の第一歩です。

Greenpacはアジア全域で展開していますが、文化の多様性にどう対応し、メッセージの一貫性を保たれていますか

幸いにも、私たちの製品は文化的に中立であり、チームも多様でありながら安定しています。マレーシアでは外国籍の従業員も多く、宗教や文化行事に偏らない「中立性」を重んじています。

どの文化を特別視することもなく、それぞれのプロフェッショナル性に焦点を当て、尊重し合う環境を維持しています。こうした姿勢が、一貫性のあるメッセージと文化的受容を両立させています。

多国籍大企業と比べてリソースが限られる、中小企業のGreenpacのような企業から、大企業が学ぶべき点はありますか。

大企業は豊富なリソースを持つ一方で、機能分化が進みすぎると、個人の成長機会が限定される傾向があります。Greenpacのような中小企業では、社員1人1人が複数の役割を担い、幅広いスキルを身につけます。これにより、社員が自らの殻を破り、個人の成長と企業の発展を同時に実現できます。

例えば、IT担当者がサステナビリティリードを兼任したり、調達担当が価格戦略を主導したりしています。私たちは、クロスファンクショナル(部門横断型)の委員会を設け、在庫管理やサステナビリティ向上などの課題解決に取り組んでいます。そして成功したチームには、昇給などの形で成果を評価しています。

この柔軟な仕組みにより、社員は自らの成長が企業価値向上に直結することを実感できます。

新しいスキル習得と挑戦を通じて、自分の貢献を可視化できる環境が、主体性とイノベーションを生む原動力となるのです。

新任リーダーが変革を任された際、最初の90日で最も重要な行動とは何でしょうか。

まず「最初の90日」という考え方を見直すことをお勧めします。多くのリーダーは就任直後に変化を急ぎたくなりますが、私はまず「観察と理解」を優先すべきだと考えています。

入社直後は、問題点ばかりが目につきがちですが、それらは自分の過去の経験に基づくバイアスである可能性もあります。

最も重要なのは、すぐに行動するのではなく、「なぜその仕組みが存在するのか」を深く理解しようとすること。表面的な問題の裏には、チームを支える「役職は無いがリーダー的存在」や「人間関係の力学」があることも多いのです。

早急な「修正」は、時に組織のバランスを崩します。真に理解するまで現状を保つ勇気と自制が、リーダーには求められます。

このようなチームを率いるには強いレジリエンスが求められます。リーダーとして自身のエネルギーと意志を維持するために、どのようなことを意識されていますか?

私は「完璧でない自分を受け入れる」ことを心がけています。自らの欠点や限界を受け入れることで、持続可能なリーダーシップに必要なバランスとエネルギーを保てるのです。

もちろん、私はステークホルダー全体の利益を実現するために、常に最善の判断を下すよう努めています。しかし、最終的には私も一人の人間であり、自分の限界を受け入れて前に進むように意識しています。

変革を進める上で、リーダーが「やめるべきこと」を一つ挙げるとすれば、それは何でしょうか。

リーダーは、「正しいリーダーシップ像」を探すことをやめるべきです。リーダーシップに「これが正解」という形はありません。最も重要なのは「その立場の本質」です。すなわち、リーダーは株主、顧客、サプライヤー、社員といったあらゆるステークホルダーの利益を最適化し、支えるために存在しているということです。

その責任を果たすためには、常に状況に応じて最適な行動を取る必要があります。場合によっては、話すことをやめて「耳を傾ける」ことが求められます。その瞬間に必要な行動を取ることこそが、真のリーダーシップです。

CEOは常に多忙で休む間もないというイメージがあります。どのようにしてキャリアとシンガポール陸軍でのボランティア活動の両立を図っているのですか。

私にとって陸軍でのボランティア活動は、CEOとしての仕事との理想的なバランスをもたらしてくれる存在です。活動を始める前は、基礎軍事訓練(Basic Military Training)を受けました。決して簡単ではありませんでしたが、その厳しさが自分を高めてくれたと感じています。この経験は、完全に思考を切り替えるきっかけを与えてくれます。

特に「展開(Deployment)」の時間を楽しんでいます。日常業務とは全く異なり、戦略を立てたり意思決定を下したりするのではなく、ただ「命令に従う」という行動を取る。それが私にとって、非常に新鮮で心のリセットになるのです。

この経験を通じて、私はシンガポール社会の別の側面を知り、さまざまな背景を持つ人々とつながることができました。それ以来、軍務に携わる男女に対して深い尊敬の念を抱いています。

彼らがどれだけ厳しい訓練を積み、何のために実際に使うことは望まない武器の扱いを完璧に習得しているかを想像してみてください。その精神的な規律と忍耐力は驚くべきものです。彼らは愛する国と人々を守るという強い使命感のもとでこの任務に取り組んでおり、その一員であることが、社会を支える土台への深い感謝の気持ちを私にもたらしています。

Imakita Chika, Greenpac CEO

今北 千佳 氏 プロフィール

Greenpac 最高経営責任者(CEO)今北 千佳。 20年以上にわたりサプライチェーン分野に携わり、専門性と環境への関心を持つ経営者。 革新的かつ持続可能な産業用パッケージングソリューションを提供するGreenpacを率い、同社を廃棄削減と効率向上を両立するエコデザインの先進企業へと導いている。 同社は東南アジアにおける受賞歴のあるリーダー企業として広く認知されている。

ルーティンワークからの解放とモチベーションの創出:AIは「仕事の目的」をいかに再定義するか

インタビュー担当:川頭 裕平、ローズ タン  

被面接者: 渡邊 仁氏 (Autofusion Pte. Ltd. 代表)| 

今回のインタビューでは、AI、ビジネスインテリジェンス、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等の自動化技術を活用したDX推進を専門とするコンサルタント兼ソリューションアーキテクトの渡邊仁氏にお話を伺い、画期的なテクノロジーがいかに職場を変革するのかを語っていただきます。同氏は革新的なAIエージェントを開発する傍ら、スタートアップ企業で技術顧問としてアドバイザリー業務も手掛け、イノベーションの文化を育む上で、従業員のモチベーションの創出とコミュニケーションが持つ重要性を強調しています。渡邊氏は、人とAI等の自動化技術が調和して共存し、誰もが自身の夢を追い求めることができる未来を描いています。

要点

  • AIは従業員の働き方をどう変革するのか? AIは反復的なタスクを自動化し、従業員が付加価値の高い創造的な業務に集中できる環境を提供することで、最終的に仕事への満足度と生産性を向上させます。
  • 企業におけるAI導入の最大の障壁は何か? 社内にデータが散在しており、AIが活用できる状態にないこと、及びAI活用に関する長期的なビジョンの欠如が大きな障壁となります。AIの導入に成功するには、長期的なビジョン、データ基盤の整備、そして、視座の面も含む従業員のAIリテラシーの向上が必要です。
  • リーダーはどのようにAI導入を促進し、従業員の不安を解消できるのか?「AIをどう活用していくのか」という明確なメッセージと共に、実際に現場で利用するプロトタイプを早期に公開し、従業員を積極的に巻き込んで改善を進めながら、各従業員のAIに対するオーナーシップの感覚を育むことです。
  • AIは人間の仕事を奪うのか、従業員はどのように備えるべきか? 将来的にはAIが単純作業は全て担うようになるでしょう。一方で、AI自体にモチベーションはありません。AI時代においては、各個人は”本当にやりたいこと”を追求し、AIはそれを実現するための頼もしい味方として活用できると考えれば、これほどワクワクする時代はないのではないでしょうか。
  • テクノロジーを受け入れるためにリーダーが今すぐできることは何か? リーダーはまず自身がAIを積極的に活用する事から始め、AIをどう活用していくのかという明確なビジョンを発信すると共に、AI活用を評価指標などに落とし込むという事も一つの効果的な施策になります。
  • 従業員とAIの関係は今後5年間でどのように進化するのか? 人材の観点で言えば、ビジネスパーソンと企業のマッチングにおいて、AIは採用の精度を大きく高めるでしょう。また、ルーティンワークはAIが担うようになるため、単純な”仕事の速さ”自体にあまり価値はなくなり、各個人のモチベーション・創造性が人材にとって不可欠な資質となるでしょう。

ミッションの起源:つまらない仕事をなくす<

渡邊様のミッションとして掲げていらっしゃる「つまらない仕事をなくす」というテーマについて、まずお伺いできればと思います。このミッションを掲げるに至った背景や経緯について、お聞かせいただけますでしょうか。

はい。まず、新卒で入社した大手メーカーでの経験が非常に大きいですね。私はソフトウェア開発部門に配属されたのですが、そこで非常に驚いたことがあります。組織として取り組んでいる内容は非常に先進的なものだったのですが、各従業員のレベルで見ると、多くの方が日々驚くほど単調な作業に追われている光景を目の当たりにしたためです。例えば、会議の調整や経費申請、クライアントの請求書作成、決裁書類の回覧・承認作業などですね。私は大学で物理学を専攻し、大学院でAIの研究をしていた事もあり、「社会人の人達はどのような仕事をしているのだろう」と入社前は期待を大きく膨らませていたのですが、これほどの大企業で多くの人々がいわゆるルーティンワークに日々追われているという事実は、大きな衝撃でした。

もう一つの大きな出来事は、ハードウェアの設計部門にいた同期の話です。新製品の試作品を開発するにあたり、どの部品がいくつ必要になるかを何万行もある巨大なExcelの部品表から算出するという業務があり、そのために彼は毎日夜遅くまで残業をしていたのです。当時、私はExcelマクロが書けたので、お昼休みなどを使ってその業務を自動化するマクロを組んだところ、彼が何時間もかけていた作業が数分程度で終わるようになりました。彼は残業から解放されただけでなく、創出された時間で、本来やりたかった設計業務などのより高度な業務に集中できるようになり、非常に喜んでくれた事を今でも覚えています。この時、自動化によって時間を創出し、誰もが本当にやりたいことに集中できる環境を作る事は、なんて素晴らしいことなんだろうと実感しました。

それが2017年頃で、ちょうどRPA(Robotic Process Automation)が登場し、「働き方改革」が大きな潮流となった時期でした。この頃に、私は本格的に自動化の道を追求したいと決意し、RPA・DX推進の専門部署があったコンサルティングファームに転職しました。まだDXという言葉が新しかった頃でしたが、様々なクライアント企業で、試行錯誤しながら業務の自動化を進めていく中で「あなたのおかげで早く帰れるようになった」といった直接的な感謝の言葉を頂く機会も多く、そのダイレクトなフィードバックが非常に嬉しく、今でも私の原体験として残っています。

リーダーの目線:AI導入時の壁、その乗り越え方

新卒時代を含む業務自動化のご経験が、まさに原体験になっていらっしゃるのですね。テクノロジーの活用によって創出された時間で、早く帰宅して家族や自分の時間を大切にできますし、本当にやりたいことのために時間を使うこともできる。まさしく「時間」が重要なテーマなんですね。
企業やリーダーが懸念するのが、導入に必要な工数やコストの観点だと思います。一方で、導入してみなければ具体的な効果がわからないため、最初の一歩を踏み出すのに大きなハードルを感じられる声をよく聞きます。この最初のハードルを乗り越えるために、渡邊さんはどのようなアドバイスをされますか?

それは、企業のビジョン、特にどれだけ中長期的な視点を持てるかにかかっていると思います。もし現場の短期的な最適化だけを追求するのであれば、新しい自動化ソリューションの導入やAI活用は、それまでの業務フローを抜本的に変える事になるため、初期の導入コストや新しいやり方への順応の観点も含め一定の難しさがあります。多くの人にとって、これまでのやり方を抜本的に変えるのではなく、それまでのやり方を続けるほうが精神的には楽だからです。これはAIに限った話ではなく、どれほど楽になると聞かされていても、スマートフォンを使い始めた頃、最初は誰もが難しいなと感じた事と同じ話かと思います。しかし、今後の労働人口の減少やAIの進化といった長期的な視点で見ると、最初のハードルを越えるその必要性が見えてくるはずです。

AI導入の成果はすぐに出るとは限りません。というのも、データ整備やリテラシーの観点も含め、ほとんどの企業でまだ、AI導入ですぐに効果が出るような土壌が整っていないためです。つまりこれは、短期的にわかりやすい成果を取りにいくような話ではなく、長期的かつ持続的に大きな成果を取りにいくための基盤作り、つまり投資に近い位置付けになります。これは相応の体力、つまりリソースがある企業でなければ難しいという側面は当然ありますが、半年~1年程度では大きな差が出ない場合も、3年、5年と経った時に指数関数的に大きな差が開いている可能性があります。今後更にAIの進化は加速していく事が予想されるため、今からアクセルを踏んでおかなければ、気づいた時には事業自体が破綻しているという事にもなりかねません。これは一過性の効率化対応ではなく、本格的なAI時代の到来に向けた基盤作りとして議論する必要があります。

そして、その基盤ができていれば、今後の更なるAIの進化を含む新しいテクノロジーが登場した際のキャッチアップ、及び、効果の刈取りが非常に速くなります。つまり、AI時代においては、段階的にAI-Readyな企業へ変革していく必要があるという事です。

現時点においては、AI導入で最も大きな問題となるのが、社内データが散在していたり、アナログな紙媒体中心で整備されていないケースです。どれだけ今後AI自体の性能が上がったとしても、必要なデータが整備されていなければAIの本当の価値を引き出す事はできません。実際のところ、これまでデジタル化やDXを怠ってきた企業がいきなりAIソリューションを導入したり、優秀なAIエンジニアだけを採用しても、必要となるデータにアクセスできず、プロジェクトが上手く進まないという結果になってしまうでしょう。現在AI活用の恩恵を最も受けられているのは、これまでデジタル化を含むDXに泥臭く、試行錯誤を重ねて取り組んできた企業になります。

AI導入でわかりやすい効果がすぐに出るとは限りませんが、中長期的な視点でAIの活用戦略をどう位置付けていくかという事が、どの組織にとっても今後重要なテーマになるのではないでしょうか。一定のコストと変革が求められる以上、AI活用に取り組む事も当然、一定のリスクははらみますが、一方で、AI活用に今アクセルを踏まないという意思決定にも、今後のAI時代においては、それ相応のリスクをはらむ事になると思います。誰も正解を持っていない問いであるだけに、ここはまさにリーダー達のテクノロジーに対するビジョンが問われているのではないでしょうか。

AI導入の成果はすぐに出るとは限りません。むしろ企業の中長期的な成長に向けた投資に近い位置付けになります。真の自動化を実現するには、AIが活用できるデータが整備されている必要があり、加えて、従業員の間にAIリテラシーを醸成していくことも重要です。まさに今、リーダー達のテクノロジーに対するビジョンが問われています。

AI導入と適応:従業員を不安から安心に

その長期的なビジョンを、短期的な成果を重視しなければならない企業が理解と実行をするのは難しさがありそうですね。「目の前に分かりやすい成果があるじゃないか」という現場目線とのギャップがどうしても生じるので。AIを導入する際、現場が感じるストレスは確かにあります。また、先ほどおっしゃられたように、従業員のITリテラシーを育んでいく必要もあります。これまでのご経験の中で、従業員のITリテラシー向上という課題に、どのように取り組んでこられましたか?

従業員の視点ではやはり、「これで自分の仕事が本当に楽になるのか?」という事が最も大きいかと思います。よくある間違いは「データが重要なので、システムの入力をちゃんとしてくれればAIが使えます」といった指示を最初から一方的な形で押し付けることです。現場としては、これまでのやり方を変える以上、その手間に見合うリターンがなければ、当然これまでの業務を変えるモチベーションが湧きません。ですから、AIの導入に関わらず、新しいソリューションの導入で私が最も重視しているのは、初期段階でプロトタイプやデモを作成し、まず業務ユーザーに触ってみてもらい、体験してもらうことです。「これなら使いたい」と実体験としての肌感をまず持ってもらい、現場目線でのフィードバックを受けながら、関係者間で最終的なゴールが見える状態を協力して作っていきます。

私が最も重視しているのは、初期段階でプロトタイプやデモを作成し、まずユーザーに試してもらうことです。「これなら使いたい」と感じてもらうことで、最終的なゴールが見える状態を作ります。

例えば、BIのダッシュボード構築などが良い例です。今まで何時間もかけて手作業で集計していたデータが瞬時に可視化されたり、関係者間で必要な情報の連携が随時可能になる。この「リターン」をまず実際に体験してもらいます。そうすると、データが正しく入力されなかったためにエラーが出た時も、「ああ、自分があの時しっかり入力しなかったから表示されないのだな」と、原因と結果が目に見える形で理解できます。この「リターン」をまず明確に理解してもらうのです。 最近、特にDXを推進する優れたリーダーの方々には共通点があり、それは、かつて主流だったウォーターフォール型開発のように、すべてを完璧に作り込んでからリリースするのではなく、「まずプロトタイプを開発し、現場を早期に巻き込んでいこう」という姿勢です。 このやり方は、現場のメンバーをプロジェクトに巻き込み、「共に創り上げていく」という感覚を醸成します。システム部門からの「こちらで作ったので使ってください」という一方的な形ではなく、開発段階から現場を巻き込み、フィードバックの反映も含めた当事者意識を全員に持ってもらう事で、より良いものを協力して作り上げていく事ができます。この当事者意識が、開発効率や品質の向上に加え、リリース後の利用の定着や更なる改善活動に繋がっていきます。 当たり前ですが、現場の業務は現場の担当者が最も深く理解しています。つまり、一方的な押し付けではなく、現場の実態(ボトムアップ)と経営者達の想い(トップダウン)を上手くコミュニケーションを取りながら融合できるかが最も重要で、そのためには抽象的な議論に終始せず、実際に動く物を見せながら早期に関係者を巻き込んでいく事が最も重要だと考えています。
生産性を高め、無駄な業務を削減し、より価値の高い仕事に集中できる環境を作りたいと考えている中で、このアプローチができるかどうかが非常に大きな差に繋がりそうですね。

少し話は変わりますが、現場の観点だけではなく、マネジメント層の観点からも今最も重要だと考えているのが、適切な情報の「可視化」です。多くの企業で今も蔓延しているのが、報告のためだけの資料を作成する文化です。様々なシステムからデータを抽出してまとめ、資料を作成して管理職に報告資料として提出する。この作業は、作成する側はもちろん、資料作成を依頼する管理職側にとっても、依頼した資料が期限までになかなか上がってこなかったり、やり直しが発生したりと、大きなストレスとなります。

そこで私が自動化推進プロジェクトにおいてクライアントと実践したのが、プロジェクト全体の進捗状況とROIを可視化するダッシュボードの構築でした。これまでは四半期毎の報告の集計が非常に煩雑かつ、マネジメント層としても現場の実態がタイムリーに見えないという悩みがありましたが、このダッシュボードの構築により、現場の作業時間の削減と共に、マネジメント層が随時状況を確認できるという状態を構築する事ができました。この結果、定期的な進捗報告の会議を廃止し、問題が発生した時だけアドホックに集まり、関係者で集中して議論するというやり方に変える事になり、プロジェクト全体の改善のスピードと品質の向上に寄与しました。

このように必要な情報を随時可視化し、透明性を高めておく事で、マネジメント層も「今、状況はどうなっているのか」と気を揉んだり、報告資料の作成を依頼するストレスから解放されるようになります。私も若手の頃は、報告のためだけの資料作成にかなり時間を費やした経験がありますが、いわゆる報告に関する作業が減り、ディスカッションや次のアクション検討がタイムリーに行えるようになる事は、現場視点でもマネジメント層の視点からも重要だと思います。

まず、必要なデータを可視化することで「報告のためだけの会議」をなくす。そして、そのデータを見て「次に我々は何をすべきか」というアクションの議論に集中する。さらに一歩進めて、データの可視化に留まらず、AIを活用してインサイトを導き出すことも可能です。「現状はこの通りです。そして、AIの分析による提案はこちらです」といった形で、これまでコンサルティングファームに依頼していたような分析を、徐々に内製化し、かつ、タイムリーに実施できるようになります。

つまり、現状が常に可視化されている上に、AIの改善提案も参考にして、関係者間でディスカッションが始められるため、より質の高い議論に時間が使えるようになります。このようにして、かつて単純な作業に費やしていた時間を、より付加価値の高い仕事へ充てられるようになると思っています。

データを可視化することで、「報告のためだけの会議」をなくす。そして、そのデータとAIのインサイトをベースとして「次に我々は何をすべきか」というアクションの議論に集中する。

AIやテクノロジーが当たり前となっていくこの時代において、従業員はどのようなスキルセットやマインドセットを持っているべきでしょうか?また同時に、リーダーはどのようなアプローチでそれを育んでいけるのでしょうか?

AI時代においてはまず、リーダーからのメッセージとして「これまで優秀とされてきた人材の定義が変わった」と明確に打ち出すべきだと考えています。これまで優秀とされてきた、ロジカルシンキングが得意、指示されたタスクを高速に処理できるというところは、ある種AIの最も得意とする領域なので、相対的に付加価値が小さくなっていきます。一方で、多少粗削りでも良いので、ゼロイチの提案ができる人、少し変わった斬新な切り口で物事を考えられる人の価値が高まってきています。つまり、決まった正解を出す事よりも新たな問いを立てられる力の方が重要なので、むしろこれまでは推奨されなかったような、あるいは私が新卒の頃などには怒られていたような行動こそが評価される時代に突入しています。一方で、リーダーからの明確なメッセージがなければ、従業員は「今何が期待されているのだろうか。私達はこのままで良いのだろうか」と不安を抱え、積極的な行動が取れなくなります。AIなどのテクノロジー活用に関しても、組織として何が求められているのかという事を明確にメッセージすることで、従業員のエンゲージメントを高め、安心して業務を行う環境を作る事ができます。

2つ目は、組織のピラミッド構造についてです。私は大手のクライアントと仕事をする機会も多いのですが、大きな組織の中では、いかにして従業員の当事者意識を維持できるかという事が常に課題となります。どれだけ組織のピラミッドをフラットにしようとしても、事業を運営するためにはチームが必要であり、大企業の性質上、組織構造は自然と大きくなる傾向にあるためです。

しかし、AI時代になるとこの構造が大きく変わってきます。AIが労働力の主役となっていく時代においては、従来のような、人中心で構成されるピラミッド構造ではなく、人間が担うべき領域が企画・マネジメントのような上層に移行し、実行領域である下層はAIが担う形になります。

これはAIに置き換えられて人が減るという事ではなく、同じ人員数で、ピラミッドのサイズは維持したまま、ピラミッドの数自体を増やせるという事です。今後はむしろ、数人程度の人員で構成され、多数の強力なAIを労働力として持つ、少数精鋭での高付加価値なチームを作る事が一つの目標になってくるでしょう。こうなると、ある意味では全員がリーダーであるとも言えます。

なるほど。「うちの会社で本当にそれをやっても良いのか?上手くいくのか?」という疑問が湧く瞬間もあると思います。全社的に一斉に方針を宣言することに難しさがある場合は、特定のチームや部門に絞って試験的に試行していくのが一般的なのではないでしょうか。

はい、まずは少人数のチームで試行してみる。そして、そこで成功したモデルを段階的に展開していくというアプローチもありだと思います。新しい働き方を試行しつつ、これまでの人ベースのピラミッドから、AI時代のピラミッド構造へと移行していく事できれば、従業員が大きな当事者意識を持てるようになると思います。いわゆるトップダウン的な指示に元でのやらされ仕事ではなく、AIという強力な味方をつけ、各人が主体的に方針を立て、物事を進められるようになれば、仕事はどんどん楽しくなっていくのではないでしょうか。

AIと仕事の未来:”人”中心の視点

AIの進化は止まりませんね。同時に、以前からよく議論されている懸念があります。AIの台頭によってこれまで人が担ってきた仕事や職場における自分の「居場所」が失われるのではないか、という不安です。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
この点に関しては、AI時代において、人々はもっと「わがまま」になり、自分が本当にやりたいことを全力で楽しむべきだと考えています。 これまで、特に日本の組織では、「与えられたタスクを迅速かつ正確にこなせる人材」が優秀とされてきました。そこでは自らの個性を抑えることが、ある種美徳とさえ考えられるような面もあったかと思います。しかし、これからはそのタスク処理の領域はAIが担うようになります。私たちは学生時代、そして社会人生活の中で、暗黙的に周りの空気を読む事が求められ、「本当にやりたいことはやってはいけない」と自らの欲求を抑圧するように教え込まれてきた側面があります。 これまで培ってきたこの抑圧的なマインドセットを意識的に変えるべき時代が来たと思っています。私自身も最近ますます、言ってしまえば「わがまま」になってきたなと感じています。これは自分勝手で何でもやっていいという事では当然なく、自分自身に対して素直になるという事です。私としては、これだけ頼もしい味方であるAIが自由に使える時代なので「あれもやりたい、これもやりたい」とやりたい事が次々に出てきます。 そう話すと「自分には特にやりたいことがない」と答える人もいるのですが、深く話を聞いていくと決してそんなことはない事がわかります。本当はやりたいこと自体はあるのに、「自分にはできない」「やるべきではない」とどこか諦めてしまっている事が多いのです。これは特に、このAI時代においては非常にもったいない事です。なぜならここが人間とAIの決定的な違いであり、人間と違って、AIにはモチベーションがないからです。 モチベーション、つまり「これをやりたい」という内発的な動機こそが、人間に残された唯一無二の価値だと私は思っています。その「わがまま」とも言える純粋な動機を強く持ち続けること。それさえあれば、AIを強力な味方として活用し、自分のやりたい事を実現していく事ができます。 AIによって仕事がなくなるという恐怖は、「自分の仕事はタスクを処理することだ」という前提から生まれます。そうではなく、「AIを使い、今までできなかった本当にやりたいことに挑戦する」というマインドセットに切り替えれば、AIは前例がないほど頼もしい味方になります。この思考の転換が非常に大切になります。AI時代においては、ニーチェの言う「超人」のように、誰もが純粋な子供の状態へ回帰していくのかもしれません。そう考えれば、これほど楽しい時代はないのではないでしょうか。

DXの推進:東南アジアにおけるAIの今後の展望

ここからは、目線を我々がビジネスを展開している東南アジアやシンガポールに移したいと思います。渡邊さんは2024年にシンガポールに移られたとのことですので、ちょうど1年ほどになるかと思います。この地域における日本企業のDXの課題、そして今後の展望や期待について、どのようにお考えでしょうか。

そうですね。国を超えた話という意味では、AIはいわば「潤滑剤」のような役割を果たしてくれると思います。言語の翻訳はもちろん、それぞれの文化や歴史、価値観の相互理解の側面も含め、異なる国同士の間に立ち、相互の協力を促してくれる存在として活用できるため、この分野の進展は間違いなく加速していくでしょう。これは海外から日本に来る方々にとっても同様です。これまでは言語や文化の壁が非常に大きな障壁として存在していましたが、AIがそれらを取り払ってくれるようになります。例えば、製造業などでよくある話で、現地で工場を立ち上げ、現地スタッフを雇用したものの従業員がなかなか定着しないといった問題がありますが、これは事業計画の段階では日本からだと見えにくいものです。

しかし、今はAIが使えるので、「特定の地域で事業を行う上での留意点」を商習慣や文化、歴史や人々の価値観の側面も踏まえて非常に詳細な粒度でわかりやすく教えてくれます。もちろんこれだけでは十分ではないですが、これまでであれば収集するのに多大なコストがかかっていたような、非常に価値のある1次情報を瞬時に提供してくれるでしょう。逆に、東南アジアの起業家が日本市場への進出を検討する場合も、事前調査や現地とのコミュニケーションを強力にサポートしてくれるようになるため、これまでかかっていた大きな労力を削減し、より本質的な取り組みに集中できるようになるでしょう。このように、AIが国家間の良い潤滑剤として機能し、国を超えたプロジェクトや協力関係が大きく進んでいくのではないかと、非常にワクワクしています。

今のようなAIがまだなかった頃、オフショア開発として、インドのエンジニア達と仕事をした経験がありますが、まさにその時に課題を感じました。レスポンスの速さや会議調整などの時間に関する面もそうですが、軽微な意思疎通における認識齟齬が頻繁に発生し、コミュニケーションの難しさがあったのです。それに加えて、現地では転職を繰り返しながら給与を上げていくのが当たり前という文化があり、現在の業務に就きながらも、常に次のキャリアを考えている、といった働き方に対する価値観の違いもありました。日本の当たり前は海外の非常識を言われているように、そういった文化や価値観のギャップを、AIがうまく補ってくれるのではないかと考えています。AIはどちらの立場にも立って考える事ができるという所が、コミュニケーションを促進していく上で大きな強みだと思っています。

リーダーのための指南書:AIが育むエンパワーメント

今回のお話を通して、テクノロジーやDXがもたらす好影響について大変よく理解できました。リーダーがテクノロジーを導入し、より付加価値の高い仕事を生み出していくために、極端な話ですが明日からでも起こせるような最初の一歩があるとすれば、何から始めるのが良いでしょうか。

まず確実に必要なのは、リーダー自身が実際にAIに触れてみることです。ChatGPT, Claude, Geminiを始め様々なツールが登場していますが、これらを自ら試すことが必須だと思います。ただ、その上で非常に重要なのは、AIに対する「自分なりの哲学」を磨いていくことです。というのも、AIの使い方に唯一の正解は存在しないからです。そのため「自社ではどのようにAIを活用していくのか」という事を社内で徹底的に議論する必要があります。そうした議論や方針がないまま、ただChatGPTのようなツールを導入しただけでは、従業員はどの程度AIを使えば良いのか、またどのような方向性で使っていけばよいのかが分かりません。

海外のある有名企業で、従業員の評価項目に「AIをどれだけ活用したか」という指標を導入したという話は非常に面白いと感じました。

もちろん業種にはよりますが、特にホワイトカラーの場合、個人の生産性や仕事ぶりを測る上で「AIをあまり使っていません」という従業員は、AI時代においては率直に言ってしまえばローパフォーマー、つまり生産性が低いと見なされる可能性があります。そのため、AIの活用度合いを評価指標に加えることで「AI活用が会社の方針として求められている」という明確なメッセージになります。これは社員がAIを活用する明確なモチベーションになる上に、AIにもともと関心が強かった人達も、安心してAI活用に取り組めるようになるでしょう。さらに、評価面談などで、リーダーが現場から「このようなAIの使い方が効果的でした」といったフィードバックを受け、その学びを組織全体に展開していくというような好循環も期待できます。会社員として勤務している友人達と話していても「うちの会社ではAIをどこまで使っていいのか、AI活用が推奨されているのかどうかがよくわからない」という声をよく聞くので、単純な呼びかけではなく、AIの活用を評価指標に組み込むという事は明確なメッセージとして機能するのではないでしょうか。

また別の例として、新規事業の提案時には、「その業務はAIでは実行できないか、十分に検討したか」を問う仕組みを導入している会社もあります。新規事業を提案する際は、通常「この事業を開始する際にどれだけの人的リソースが必要か」といった計画を立てると思います、そのプロセスにおいて、「なぜその業務をAIではなく人間が担当する必要があるのか」を明確に説明することが求められます。これにより、提案者はまず「これはAIでできないか」と自問自答するようになります。その上で、人間でなければ難しいと判断した場合にのみ、人的リソースを要求するという流れになります。この「AIでできないだろうか」と常に考える仕組みは、AI時代において、各従業員達がAIへの洞察を深め、リテラシーを高めていく上で良いトレーニングになるのではないだろうかと感じました。このように、組織や社員にAIの活用を促す「仕組み」をどう構築していけるかが非常に重要なポイントになると思います。

なるほど、確かにそうですね。リーダーが自分で試したり、単に「AIを使っていきましょう」と発信するだけでなくそれを仕組みとして組織にしっかりと落とし込んでいくことは非常に重要ですね。

リーダー層がよくあるメッセージや動画等で呼びかけるだけでは不十分で、「評価制度に組み込みます」といったように会社として具体的な仕組みまで作っているとなると、従業員にその本気度が伝わるのではないでしょうか。

例えばワーキンググループのようなものを立ち上げ、AI活用について継続的に組織で検討していくのも一つですし、評価制度に関しても、自身の利用状況だけでなく、「自身の新たな学びや知見をチームにも共有しましたか?」といった項目を加えても良いと思います。AIの進化はあまりにも速く、私自身すべてをキャッチアップする事は既に不可能になってきています。つまりこれは、組織的な取り組みであり、自身の活用実績だけでなく「知識を共有してチーム全体の生産性向上に貢献したか」という点も評価することで、良い機運が生まれ、学びの相乗効果も期待できます。

新しい物事に取り組む姿勢には、様々な要素が含まれていると思いますが、スキルの巧拙に関わらず、そうしたモチベーションや意識を醸成していくことこそ、リーダーの役割だと思います。

人と自動化が生み出す効果:採用と人材における今後5年間の展望

最後に、私たち「働く人」と「オートメーション」の関係性についてお伺いします。この関係はもちろん今後も続いていくと思いますが、5年後という比較的近い将来においてその関わり方はどのように変化していくとお考えでしょうか。

まず採用や求人の領域で言いますと、AIによってマッチングの精度が劇的に向上するでしょう。これは仕事を探す個人にとっても、人材を募集する企業にとっても同様です。マッチングの精度が大きく高まるので、私たち個人がすべきことは、本当にやりたいことをある種「わがまま」なくらい明確に示していくことです。そこで忖度をして、いわば万人受けするような個性のない表現にしてしまうと、AI側も本人の意図を明確に読み取れなくなります。逆に「これがやりたい」と明確に意思表示をすれば、これまで選択肢が非常に少なかったような場合でも、AIによってマッチング対象の母数もマッチングの精度も飛躍的に向上するため、AIが最適な候補を見つけてきてくれるようになります。

逆に企業側としても曖昧な求人票や業務内容を提示するとAIには真意が理解しにくいでしょう。双方ともが明確な意思表示をすることが重要です。選択肢は増えるのですから、それぞれが忖度する事なく自分達の目指す目的にこだわった上で、AIにマッチングを任せるべきです。

先ほど述べたように、AIによっていわゆる生産性は今後飛躍的に上がっていくと思いますが、モチベーションに関しては別問題で、AIに内発的なモチベーションはありません。私が目指すオートメーションの理想の姿は、強いモチベーションはあるもののリソースが不足している人々を支援することです。例えばこれまでであれば、意欲はあるが、資金がないのでなかなか新しい取り組みを始められなかった、といった人達に、オートメーションやAIといったテクノロジーを提供し、個人や組織の能力を拡張していく。そして、誰もが本当にやりたかったことに挑戦してワクワクできる、そんな時代にしていきたいですね。

逆に、どれだけタスク処理が速く、いわゆる地頭が良くても、「これがやりたい」という強いモチベーションがない人の価値は、相対的に下がっていくでしょう。そして、私自身はそれ自体は非常に良い事だと思っています。今後のAI時代に真に問われるのは、私たちが「タスクをいかに正確に速くこなすか」というこれまでの価値観から脱却し、ある種、子どものように「わがまま」になれるかどうかです。何かをやりたいという強いモチベーションがあり、その意思を示せばAIが助けてくれます。

元々オートメーションの道を志した理由もここにありますが、私のミッションは、個人や組織の能力を拡張し、全員が本当にやりたいことをやっているという状態を実現することです。つまらないけれど必要な仕事に関してはAIに任せてしまえばよく、本当にやりたい事を追求して良い、むしろ、それにしか価値がない時代が近づいてきていると思います。

「仕事が速い人/遅い人」という概念そのものがなくなるのではないかと感じました。誰もがAIを使うことで一定のスピードを担保できるようになるため、「仕事の速さ」によって生じていた優劣がなくなりその点での差別化は失われていくんでしょうね。

ええ、その概念はなくなっていくと思います。問われるのは、意欲があるかどうか、面白いか、クリエイティブか、といった人間的な魅力の点になるでしょう。これまでの「優秀な人」の定義が、大きく変わる時代に突入しているということです。

私自身、エンジニアとしてこれまでは、プログラミング的なスキルが非常に重視されていましたが、今ではプログラミングやテストといった工程の多くをAIに任せるようになっています。そのおかげで、作りたいものをどんどん形にする事ができる上に、事業ドメインや企画領域の検討にも踏み込みながら、常時5つ以上のプロジェクトを並行して進められています。私個人としては、10年前や5年前では夢だったような事が実現できているので、今は楽しくて仕方がないですね。まさに「わがまま」が許される時代、やりたいことを実現できる時代になったのだと思います。これまでつまらないと感じる仕事に従事していた人達や、まだ若い世代の人達も含め、皆が本当にやりたい事を全力で楽しんでいる。そんな未来が実現できたら、本当に幸せだと思いますね。私も今後更に、AIというテクノロジーを全力で使い倒して、自分と周りの人達の夢を叶える活動に邁進していきたいと思います。

まさに「わがまま」が許される時代、やりたいことを実現できる時代になったのだと思います。AIによって、つまらないと感じる仕事に従事していた人達や、これからの若い世代の人達も含め、皆が本当にやりたかった事を全力で楽しんでいる時代の実現を目指す。

渡邊 仁  氏

渡邊 仁 氏​

AI・BI・RPA等の自動化ソリューションを活用した業務自動化のコンサルタント兼ソリューションアーキテクト。株式会社デンソーでソフトウェアエンジニアを経験後、KPMGコンサルティング, IBM等で多数のクライアントの自動化CoEの立ち上げ・リードを実施。大阪大学物理学科卒、奈良先端大情報科学修士。日本にて独立後、現在はシンガポールの Autofusion Pte. Ltd. 代表として、AI ベンチャーの技術顧問も務めながらAIエージェントの開発・推進支援を手がける。​

渡邊 仁氏の洞察に満ちた視点は、AIと共に育まれていく仕事の未来について説得力のあるビジョンを示しています。貴社がAI導入の変革を求めソリューション提案に興味がございましたら、jin.watanabe@autofusion-sg.com までお気軽にご相談ください。

AI導入とDXの複雑さを乗り越えるには、戦略的なパートナーシップが必要です。Good Job Creationsは、この道のりにおいて貴社をサポートし、適切な人材とソリューションを結びつけていくよう努めています。

ご質問ご相談はenquiry@goodjobcreations.com.sgまでお問い合わせください。

成功の基盤としての文化

インタビュー担当: ローズ タン

被面接者: 芝崎公哉 (GJC 代表)|

G 創刊号では、「文化がもたらす変革」をテーマに、組織文化・社風が企業だけでなくその中にいる個人にどのような影響を与えるかを考えます。今回は、シンガポールの多文化環境で人材紹介会社を築き上げ、10年以上にわたりリーダーシップを実践してきた芝崎公哉氏にお話を伺いました。透明性のあるコミュニケーション、チームワーク、文化理解がGJCの成功にどのように寄与したかを明らかにしていきます。

GJC文化の進化と土台

多様性のあるシンガポールにおいてGJCを十年以上率いてきた中で、市場から求められる企業文化や社風に変化などはありましたか?また、GJCはどのようにしてその変化に対応してきたのでしょうか?

2013年にシンガポールへ来た際、GJCにはすでにチームワークを以て顧客に良いサービスを提供しよう、という強い信念を持っていました。私たちは全ての候補者と対面で面接を行い、紹介先での勤務開始日には紹介先企業に同行するなど、候補者との関係構築に注力していました。

その後、大きな変化として感じたのは、「内向きの文化」から「外向きの文化」への転換です。当初は社内サポートやポジティブな雰囲気作りを目的としたチームワークが中心でした。しかし、それだけでは十分ではないことに気づきました。本当の意味で成功するためには、市場やクライアントの変化するニーズに気づき、行動できることが必要です。

これにより、より専門的で技術的な社内コラボレーションへとシフトしました。

「思いやり」の文化から「思いやりと競争」の文化へ進化したと言えます。この競争は敵対的なものではなく、お互いを高め合いながら価値を提供するものです。

また同時に、透明性も大切です。社内でのミスや間違いについても隠さずに共有し、どうすれば改善ができるか、を全員で考えます。ミスを責めるのではなく、改善策を考える。それぞれのメンバーの建設的な姿勢こそが、弊社の成長の基盤だと考えています。

この「ミスを責めない」という文化はどのように機能しているのでしょうか?ミスをシェアするという社風はどのように成り立っているのですが?

このプロセスには慎重な管理と指導が必要です。まず、報告を受ける側、マネジメントサイドに、起きてしまったことを責めない、という意識を持たせる必要があります。そしてその責任を追及する代わりに、外部への影響を最小限に抑えることに議論をフォーカスさせます。その後、社内で学びのセッションを実施します。このセッションは調査ではなく対話です。参加者全員が客観的であることが重要です。

そこでは、ミスがあったことは認めつつ、それを防ぐためには何ができるかという学びに焦点を当てます。この過程ではミスについて共有し、それぞれが解決策や予防策を考え実行します。このような環境では、人々がミスを認め、それから学ぶ場として機能します。

異なる文化的バックグラウンドを持つ新しい社員に GJCの文化・社風を紹介する際、何か特別な研修を運用していますか?

基本的には大きく変わらないと思います。強いて言うなら、採用プロセスにおいて、当社の文化や業務スタイルについて十分説明します。その上で国籍に関係なく価値観が一致する候補者を選びます。このようにして最初から強いフィット感を確保しています。

国籍による文化的適合性ではなく、組織文化への共感度を見ることが重要です。当社チームは多様なバックグラウンドを持つメンバーがいますが、CORE VALUESへの共通認識があります。この一貫性こそが、新入社員の増える成長期においても変わらない社風を維持するための鍵となっています。

GJC では、離職率が低く、長期的キャリア形成が可能となる理由について教えてください。

人材紹介業界は業界として離職率が高い傾向があります。
しかしGJCでは、自分自身の貢献度を感じる社員ほど長く働いています。これは、候補者・クライアント、そしてチームに対する貢献度です。この目的意識は国籍問わずチーム全体に浸透しています。

結果として、この目的意識が強い帰属意識につながります。当社では部門間で協力し合いながら成長し、一緒に成功や失敗から学ぶ環境・社風があります。技術的スキルだけでなくコミュニケーション能力や共感力などソフトスキルも重視しています。社員には自己成長への責任感と、それを支援するリソースやメンターシップも提供しています。その結果、多くの社員から「入社時よりも能力と自信が向上した」と言われます。それこそ真の定着率の指標だと思います。

人材育成とリーダーシップ論

新しいリーダーとして中間管理職になる社員へどんなアドバイスがありますか?

最も重要なのは「適応型コミュニケーション」です。透明性だけではなく、それぞれの状況や個人に応じてコミュニケーション方法を変えながらGJCのコアバリューを伝えることです。

リーダーシップに正解はありません。新しいマネージャーには、自分らしいスタイルから始めつつ、先輩や上司からのフィードバックや結果によって柔軟に変化することを勧めています。ただし、このトライ&エラーには明確且つ一貫性ある説明が不可欠です。方針などを変更する前にはその理由や期待される成果についてチームへきちんと説明し、メンバーが抱える不安や懸念点について早期段階で意見交換できる場を設けるべきです。

様々な決断を迫られるリーダーは時に孤独を感じます。新たにリーダーとなる社員も例外ではありません。でも、彼らは一人ではありません。

『マネジメントチームへようこそ』といった具合に、他のリーダーたちとの情報交換や相互アドバイスなどができる機会を設けることで、孤独感の解消と、マネジメントの一枚岩、を実現できると考えています。

多くのリーダーは、メンバーから正直なフィードバックを集めるのに苦労しています。心理的安全性を築き、正直なコミュニケーションを促進するために最も効果的な方法は何ですか?社風はどのように関与しているとお考えですか?

本当に正直なフィードバックを得ることは、簡単ではありません。リーダーは、完全にフィルターのかかっていない回答を得ることはほぼ不可能であることを理解しなければなりません。しかし、強い関係性を築くことでそのギャップを埋めることはできます。リモートワークや柔軟な働き方により、さらに難易度が上がっているように感じますが、それでも私たちは「人材ビジネス」に従事しているので、何よりも関係性が重要です。

部下との関係性はすべての基盤になります。

コロナ以降のリモートワークや柔軟な働き方は部下との関係構築を更に難しくしましたが、それでも関係構築は重要です。一緒に昼食やコーヒーを飲む、夕食に行く、その他の非公式な交流を作ることが確かな違いを生みます。リーダーはこれらのコミュニケーションを率先し、チームメンバーに対する配慮や理解を示す必要があります。

会社組織としては、人事チームなどによるフィードバックシステム(投書など)を準備できますが、それが本当に機能するためには、マネージャーとチームの間に強い結びつきと信頼が不可欠です。私がおすすめは「現場に出る」ことです。同じ目線で同じ方向を向いて仕事をすることが、自然なコミュニケーションのきっかけとなり、信頼を生みます。異なる立場から問題に対峙するのではなく、一緒に同じ方向を向いて課題に取り組むことができます。

多文化環境における挑戦と強み

多文化のシンガポールで日系の人材紹介会社を運営することは、課題も多いと思います。文化的な衝突や課題などの例はありますか?

異文化が混在する環境で最も危険なのは「思い込み」です。

私たちは皆、無意識のうちに、自分の文化的背景に基づいた思い込みをします。まず私たちは、自分たちの思い込みが自分特有のものである可能性を認識する必要があります。背景、文化、国籍、さらには性別に関わらず、他者が自分と同じように物事を理解していると思い込んではなりません。シンガポールで10年経った今でも、度々、同じような問題にぶつかることがあります。私は常に自分に言い聞かせます。「思い込むな」と。他者の反応に注意深く目と耳を傾け、疑問がありそうな場合は繰り返し説明し、建設的なコミュニケーションをとることが肝心です。

GJC の多文化的な視点は、結果として強みとなっていますか?

強みだと言えると思います。私たちの多様な国籍、文化、思考は、新しいアイデアやイノベーションをもたらすという強みの一方、メンバー同士の誤解や摩擦といった弱みにもなることがあります。ただし、この強みと弱みの両方の視点を全員が持っておくことで、強みを享受し、弱みをみんなで解決しよう、という動きになります。

ある人がネガティブだと見なす状況でも、別の人は変化や成長の機会と見るかもしれません。この視点の多様性も非常に貴重です。国籍、人種、その他の要因であれ、異なる背景は自然に異なる考え方をもたらし、あらゆる課題や機会の多面的な思考を可能にします。多様な視点は、予期せぬ可能性を解き放つことができるのです。

経営哲学と未来へのメッセージ

「文化がもたらす変革」を探求するにあたり、文化の力に関して、読者に伝えたい最後の考えは何ですか?

私のアドバイスはこれです:自社の文化的な強み、すなわち「カルチュラル・アドバンテージ(Cultural Advantage)社風」を定義し、明確に示し、実践してください。 業界や規模に関わらず、すべての組織には独自の文化的な強み、他社との差別化を図る「秘伝のタレ (Secret Sauce)」のようなものがあります。一般的な限界や業界のステレオタイプに自らを定義づけるのではなく、自社の文化・社風を従業員にとって価値のあるものにしている要素を特定し、それを徹底的に強化・明文化・そして発信してください。

多くの日本企業では、短期的な利益よりも長期的な成長を重視したり、サービスや商品の品質に対するこだわり、継続的改善(改善)など、深く根付いた独自感覚があります。これらは、多様性の求められる現代にこそ、強力な武器となり得ます。価値観や社風を書き出すだけでなく、すべての採用決定、業績評価、クライアントとのやり取りでそれらを体現するべきだと思います。自社の文化的なアドバンテージを非常に明確かつ具体的にすることで、そこに人が共感し、共鳴する。文化的なアドバンテージが、磁石のように仲間を集めてくるのだと思います。

GJC 独自の文化とリーダーシップ・アプローチについて多くを語っていただきました。GJCの文化構築に大きな影響を与えた個人、書籍、または哲学について教えていただけますか?それが、私たちが話してきた課題や機会に特に関連して、あなたのリーダーシップ行動にどのように影響を与えましたか?

パナソニックの創業者である松下 幸之助氏から深い影響を受けました。彼は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。

成功するところまで続ければ、それは成功になる。」と信じていました。彼の小さな一歩への信念は、継続的な改善という日本の考え方から来ています。

私が最も感銘を受けるのは、成功は、困難にぶつかっても、小さな一歩を踏み出し続け、簡単に諦めないことから生まれるという彼の見解です。彼は、「失敗」とは単なる停止点であり、前進し続ければ道は見つかると強調しました。

私たちがシンガポールで初めてチームを拡大したとき、「日本式」の経営スタイルを押し付けようとはしませんでした。私たちは「一歩一歩」のアプローチを取りました。ローカルメンバーに心を開き、様々なコミュニケーション方法を探ってきました。実に多くの間違った選択をし、つまづくこともありました。それでも、前進し続けて来ました。

もう一つの例は、弊社の営業アプローチです。私たちは短期的な成功を求めません。代わりに、お客様との長期的な関係を築きます。お客様の変化するニーズを理解し、一貫して価値を提供する努力をします。そう一歩です。